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未来ノスタルジア スピンアウト Ep:1「Saudade」

はじめに


登場する地名、人物名、団体等は全て架空のものであり
実在するものとは何ら関係ありません。

またパープルソフトウェアより発売予定ソフト
『未来ノスタルジア』に関する登場人物とは、
現時点で未発売の為、創作上の不一致が御座いますので、ご了承ください。










―― 春、爛漫。
そして、満開の、桜。
程よい暖かさと、太陽の光が、人を少し元気にさせる。

今日は、良いことがあるかもしれない。

と、思った矢先。

【工藤 陽一】は、その光景の中にある「不自然な色」を見上げた。


「……青?」

「青」である。
自然の中に溶け込むことの無い、非なるモノ。

それが最初何なのかわからなかったので、陽一は頭を上に傾けたまま
小走りで近づいていく。

だから、前から歩いてくる少女に、気が付かなかった。


「きゃっ……」
「うわっ」

衝突。

「ご、ごめん。上を向いたまま、走ってたから見てなくて……平気?」
「ま、まぁ」

あらためて、少女に注目する。
この桜色に包まれた風景に似つかわしくない「黒い」コートを着ている。
だが、何よりグラサンにマスク、とどこぞやの銀行強盗ですか的な
恰好が気になる。いやこれは不審者じゃないのか?

「花粉症なので」

「……」

「花粉症なので」
「花粉症なので」

……あまり、詮索はしないでおこう。
他には……
長い髪が印象的である。

そしてコートでは隠しきれない豊満なむ……

「どこ見てんのよ! ……じゃなかった、どこ……見てるんですか」

ぽっ。……謎の効果音がしたような気がしたが、
敢えて無視を決め込んでおこう。


それより、あの「青い」正体だ。


――大きな1本の桜の木。

立ち止まると、その「青い」正体が何なのか、陽一の目にも見て取れた。


「風船、ね」

少女も一緒になって、見上げる。

桜の木に留まっていたのは、誰かが誤って飛ばしてしまったのだろう、それだった。

「あそこ」

少女が指さすと、顔をくしゃくしゃにして、必死で涙をこらえている男の子。
睨むように、遥か上の桜の木を見つめている。

「あの子のなのか」





「ひっく……ひっく」

まだ泣いていない。まだ。
そう自分で言い聞かせるように男の子は肩を震わせている。

「あれ、麻衣の風船なんだ。お母さんにもらったって、僕に自慢するから、
僕、それを奪って、それで走っていたら、小石に足を……」

「麻衣ちゃんって?」

少女が訪ねる。

「……いもうと」

「いもうと、か」

陽一は反芻する。

「なぁ。……君は」

「君じゃない。僕は達哉っていうんだ」

「達哉。……君が泣くのを我慢しているのは、妹の為、なのか?」

「泣くのは、僕じゃない。それに……このままだと、本当に麻依を
『泣かせちゃう』から。僕は泣いちゃダメだから」

「達哉くん……」

偉いんだね、といって少女が達哉の頭をなでる。
そして、陽一の方を少し見るが、

「でも、高いわね。すごく」

運悪く、風船が絡まっている場所は、桜の木の頂き部分。
しかも、この付近の桜は高いことで有名だ。

ざっと見積もっても10メートルはあるだろう。
更に運の悪いことに、引っ掛かりの場所が、木の先端付近なのだ。
登って取とうとしても、その先から手を伸ばして取ることは、
不可能である。

―― そう、不可能なはずだった。







―― 面倒事は、嫌いである。
なるべく、そういうことには関わらないようにして生きてきたのが、
工藤 陽一であった。

それは、彼自身が持つ「力」の所為でもある。

(肉眼で確認出来ている以上『簡単』といえば、そうなんだけど)

幸か不幸か、風が無い。
吹けば風船は視界から消えるだろう。と、いうことは「力」が使えなくなる。
しかし、風が無いともすれば、そこから風船が落ちてきて……というのは、
「不自然」である。

(さて『超能力』……使うべきか、使わざるべきか)

工藤 陽一は、この世界で数少ない『超能力者』である。
但し、その能力とは『手を触れずに物を動かす』という、便利なのかそうでないのか
良くわからない力であった。

その力を、人前でむやみやたらに使うのは好ましくない。
バレたら犬にされるとか、そういうメルヘンチックな理由ではない。

「他人の奇異の注目」

これが一番厄介で、悲しい理由。

人は、自分たちと異なるモノに対し、必ずと言っていいほど「拒絶」する。
それは「迫害」に変わり、やがては……

止そう。

まずは、今、どうするかだ。

どうすれば、不自然になることなく、
風船を「取る」ように見せることが出来るか、だ。

(「いもうと」……か)

陽一にも、妹がいる。
その顔を思い出す。

もしも、その表情が、悲しみに溢れてしまうとしたら。

「やっぱ、こういう時に使わないと。……何の為の「力」だよ」






「『枝でも折れれば』、後は風船が勝手に「落ちる」
と思うんだけど……」

少女が何気なく言った。

「それだ!」

「へっ?」

「いや、なんでもない。……さんきゅー。なるほどなるほど」

「?」

「達哉! もしかしたら、本当に枝が折れちゃうかも」
「ほんと、お兄ちゃん!」
「フフン。まぁ、見ておきなさいって」


そうと決まれば。

―― 集中。

対象物は、2つ。「桜の枝先」と「風船」。

イメージ。

まずは、枝先を……桜の妖精さん(いたらの話)、ごめんなさい。
先っちょだけだから! 先っちょだけでいいから!

……なんかエロいな、この言い方。

いかんいかん、


集中。


……枝が少し、折れる。

「あ、枝が折れたわ!」

少女の声が「遠くから」聞こえる……ような気がするが、集中が
途切れないように、次は「風船」を意識。

持ち手部分と、枝の両方へ集中。

あとは、自然に、自然に落ちていくように……。

男の子……達哉の手に。


風船は、落ちて行った。








「ありがとう、お姉ちゃん! ついでにニーチャン!」

そう言って、達哉は風船をしっかりと握りしめて走って行った。
今すぐにでも、妹の元へ戻るのだろう。
「ごめんなさい」という、大切な言葉を伝えるために。

良い事した後は気持ち良いなぁ。

陽一がそう思っていると……

「それにしても、不自然だったわね。どうして風船が『下に』落ちたのかしら」
「へ?」

―― 不自然。陽一の耳に一番聞きたくなかった言葉が聞こえてくる。

「いや、だってさ。枝先が折れて、それで落ちたんじゃないか」
「……」

一呼吸おくと、少女は、間違いなく、

「ニヤリ」

と笑った。

マスクで表情を読み取ることはできない。だが、陽一には
そう、感じた。




そして、

察した。

「あ」

「……そうよ、風船の中身と言ったら『ヘリウム』か『水素』でしょ。
大体、手を放したから浮かんで引っかかったモノが、どうして『落ちたり』するのよ」


し、しまったーー!!
よく考えたら「当たり前の話」じゃないかっ!!

陽一は狼狽える。

「え、えっとぉ……。あ、あははー。なんでだろうねー。なんでだろー」

『達哉! もしかしたら、本当に枝が折れちゃうかも』

「ちょ、それ俺の物真似かよ?!」

「……ったく、後先考えないのは、あなたの悪い癖よ、『陽一』」

どうして俺の名前を? そう聞こうとすると……

風が。

今まで、吹いていなかったはずの、

風が吹いた。


そして、


目の前には、誰もいない。

……夢?

いや、違うか。

でも、これだけは言わせてもらおう。


「お前だって、不自然じゃないかぁぁーーーー!!!」










「何を真昼間から激しく叫んでいるんですか、近所迷惑ですよ、兄さん」
「やっほー! あははー。お兄ちゃん、ボクも叫んで良い? ねぇねぇ」

陽一が振り返ると、そこには良く似た顔をした、二人の少女が居た。

「のの、ひなのか」

「……ムッ。優先順位が低い。私が後で呼ばれました」
「あははー。ヒナちゃんに勝ったよー」
「今日の晩御飯は兄さんだけうまい棒です」

「ちょ?! どういうことだよ!」

彼女たちは陽一の義理の妹達。
工藤 野乃 と日奈乃である。どうやら、一人のんびりと外出していた陽一を
探しにやってきたらしい。

「……冗談ですよ。兄さんが出かけたというので。どうですか、せっかくですから
ここで皆でお花見というのは」
「良いねー賛成! あ、ボク詩ちゃん誘ってくるよー」

「はぁ……。まぁ、いっか」

せわしない野乃と、落ち着いた日奈乃。……そうだな。妹を大切にするのは、
兄の役目だもんな。

「よっし。皆で楽しむか!」
「はい。……あ、ちなみに兄さんの分はこれですから」

「って、うまい棒は変わらないのな」

涙で日奈乃が見えない、お兄ちゃんであった。


それにしても、


あの女の子……。

黒づくめの、女の子は一体、誰だったんだろうか。

また……

逢える。

そんな、感じがした。




【了】

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[ 2011/04/19 10:34 ] PCゲーム | TB(0) | CM(0)
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