ぼやき、つぶやき、その日の、とりとめもないことを徒然なるままに。
【クロノクロック】応援バナー
当ブログは「Purple software」を応援しています。
レズコプター
TVアニメーション「艦隊これくしょん」公式サイト

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[タグ未指定]
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

されどわれらが日々――

【この物語に登場する地名、人物名、団体等は全て架空のものであり
実在するものとは何ら関係ありません】














数年振りに故郷に帰省した。

母親と父親の過剰な歓迎もほどほどに、少し暇を持て余したので
ほんの気まぐれにと、昔通っていた小学校までの「通学路」を辿ってみようと
思った。

―― そう思えば後は早いもので、僕は自然に、歩きだしていた。




心躍る、とまではいかないまでも、歩く度に色々なことを思い出すものである。

記憶という名の膨大なデータベースは、普段眠っていたままで、何かの
きっかけで、過去の出来事とは、まざまざと甦るモノらしい。

給食袋をぶら下げてランドセルを背負ったまま、走り過ぎた日々。
そこにあったのは、笑顔だったかもしれないし、また、涙を拭いながら
トボトボと歩いていたのかもしれない。


そこにたどり着いたのは、歩き始めてからおよそ4、5分ほどのことだった。
丁度、自宅と小学校の真ん中程にある、小さな「お地蔵様」。

「あぁ、そういえば」

僕は、毎日、そのお地蔵様の頭を撫でて、「いってきます」「ただいま」
を繰り返していたっけ。

友達の少なかった僕は、少しでも「話し相手」が欲しくて、お地蔵様に
話しかけていては、寂しさを紛らわせていた。


さて。こんなにオンボロだったかなぁ、というのが初見の感想である。
見れば、所々剥げていて、首括りに使われている赤い塗料も剥げ落ち、
薄茶色のようであった。


―― 撫でてみようかな。


今は、友達が欲しいとか、そういう願いをする年でもないし、撫でたところで
どうということはない。
中学校に上がっては、別の通学路になったのだから、本当に久しぶりのことだ。

なんだか儀式めいた感じもしたが……

僕は、恐る恐る、その可愛らしい頭に「触れて」みた。




「……ひさしぶりだね」


声の方に振り返ってみる。
そこに居たのは……






「こんちゃん……こんちゃんじゃないか!!」
「あはは、変わらないなぁ、うんうん、元気そうで何よりだよ」

「……って、ちょっと待って」

こんちゃん、とは僕が小学校の時、一緒に遊んだ少女である。
当時の僕より少し年上のお姉さん。
14~5くらいの外見だったと記憶している。

最初に出会ったとき、彼女は
「うちと、お友達になってくれる?」
……と言った。友達の少なかった僕は二つ返事で承諾した。

それから、毎日のように遊んでいた。
……そう、このお地蔵様の有る場所で、いつも、いつも。

しかし……。

その話は「当時」の話だ。

今、目の前にいる少女は、何故、


「その当時のままで居る?」






夕方になるまで、僕らはまるで子供のように、遊んだ。
否、正しくは「子供のころの自分を取り戻すかのように」
ただただ「無心になろうとして」身体を動かした。

それは「決して戻ることのできない過去」を無理にでも
再現しようとする、悲しい、悲しい「遊び」だった。



だから、僕は、少女に訪ねなくてはいけない。
それが、

この「まやかし」のセカイを壊すことになったとしても。






「……君は、ほんとうに、あの『こんちゃん』なのか?」









「……そうだよ」





曇りのない目で、僕を見つめる少女。

『こんちゃん』はあだ名である。
怒らせると、まるで「キツネ」のように唇をとがらせて
非難の顔をするので、僕が付けたあだ名だ。

今、目の前に居る少女は「こんちゃん」に間違いない……のだろうか。


「ひとつ、質問してもいいかい? 僕が、小学校の時、出会ったのは
確かに君の容姿に『似ている』少女だ。でも、何故君は『成長』
していない? それじゃあ、まるで君が……」

「人間じゃない、そういうことかな。……もしそうだったら?」



「敢えて言おう。それはない。確かに、君と遊んでいるのは『僕だけ』だったし
思い出の中の少女に、君はそっくりだ。だけど、僕はそんなにセンチメンタルな
感情は持ち合わせていないんだ」



「君は……もしかして『こんちゃん』の……」

















目の前の仏壇に、手を合わせる。
初めて知る、あのお姉さんの……少女の、本名は、なんだかしっくりこなかった。

「お母さんは……いつも、貴方の話をしていました。ここは田舎だから、こういった
情報は早く入ってくるんです」
「それは、僕が帰省したってことを、かい? ……それで、君はわざわざ」

「この服、母の形見のひとつなんです。そして、母と、貴方の思い出でもある」
「そう、だね」


つまりは、こういうことだったのだ。
目の前にいる少女は、ただただ「母の想い人」を合わせたいがために。
こうした一芝居をうったわけである。


「もう……3年になります」
「そうなんだ。お父さんは?」
「私が生まれた後、離婚したそうです。……だから、本当に、私には、
母だけでした」

そういって、僕を見つめる目が、何か言いたげだった。



……これは、いけない。いけないことだ。

「帰るよ」

それが、彼女と、僕との「決別」を意味する言葉だった。

「そうですか。……でも、これだけは言わせてください。
私は、母の為を想ってあなたのことを……」

「ありがとう」

「……さようなら」











実家の滞在予定を、予定よりも早く切り上げた。
僕は、1時間に1本しかないローカル線の電車を、まるで置いてけぼりにされた
子供のように待っていた。

「……運悪く、乗り逃すなんて、これはある意味で運が良すぎるかもな」

さて、次の電車まで1時間ある。

どうしようかと手持無沙汰でいると、


「良かった。まだ私、運が残っていたみたいです」
「……君は」


麦わら帽子に、白のワンピース。

これじゃあ、まるで昔の恋愛ドラマじゃないか。
男に都合の良いだけの、本当に有り触れた、三流恋愛映画だ。


「現実は、小説よりも、奇なり、ですよ」
「そうみたいだね。……本当に良いの? 君、学校は」


「あれ、気付いていないかったんですか?」


そういうと、少女は柔らかく微笑むと、


「私『たち』、本当に、人間じゃないんですよ?」





ガタン、ガタン。


電車が、ローカル線の電車が、次第に近づいてくる。
駅員のアナウンスが、木霊(こだま)する。


「お客様、お客様、発車しますよ! お急ぎください!

……乗らなくても良いんですか、ねぇ、ねぇ!」





【了】

[タグ未指定]
[ 2010/08/30 14:57 ] ショート・ショート | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。