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千鶴の近所のお兄ちゃん【夏の怪奇シリーズ】 壱:白いうなじの少女 最終話

【登場する地名、人物名、団体等は全て架空のものであり
実在するものとは何ら関係ありません。またパープルソフトウェアより
発売されたソフト『明日の君と逢うために』に関する登場人物とは、
何ら関係ありません】




                  



「それは、間違いなく愛のちからだな!」

青色のチャイナドレスを着た少女が、より強調された胸を誇らしげに主張すると
こう答えた。

「どこを見てるのよ『また』怖い目に会っても知らないんだからね」

今度は赤いチャイナドレスを着た少女が、僕に鋭い視線を浴びせる。


ここは、行きつけの中華料理屋―― の、一室。
どうやら、従業員が使用している休憩室のようだ。

「……ったく、あんな目に会ったばかりだって言うのに、男ってホント
単純ね」
赤いチャイナドレスの女の子が、目を細めて、こちらを睨んでくる。

あんな目、というのは……
そう、まさに数時間前の出来事である。





                  



恐怖で動けない、とはまさにこの事だと。
そう思う余裕すら、僕には無かった。

目の前の少女が、白いうなじの少女が振り返った。
その顔を見て、僕は絶叫した。

「もう一度、死んでちょうだい」

と言った少女は、僕に襲いかかろうとする。

あまりの出来事に、僕は逃げるように―― といってもここはバスの中。
身体を満足に動かせない僕は、ただ後ろに「倒れる」だけしか
出来なかった。

これが、精一杯の抵抗。


―― そのときだ。

声が、聞こえたのは。


「だめっ! ―― 君っ!」

僕の名前を、呼ぶ声。

……誰だ? バスの中で、僕の名前を知っている女子なんて居たか?
クラスメイト? ……いや、僕はクラスでも女子に気軽に話しかけられるほど
社交的な存在でもなかったし、そうでなくても「暗い」「キモイ」
なんて言われて、相手にもされなかった。

いつからだろう。こんな性格になったのは。
……小学校のときは、まだそれほどでも無かったのに。
むしろ、どちらかというと、積極的で、明るい性格だったと思う。

あれは、誰だっただろう。
……小学校のとき、良く僕に話しかけてくれた女の子がいたっけ。
名前は……確か、月野……


ははっ。

苦笑する。これが、走馬灯ってヤツなのかな。ほら、死ぬ前に、
昔の記憶が甦るってヤツだ。

でも、今、聞こえたのは、初めて聴く「オト」だ。

その、

声の主は――

僕に、こんな僕に、

涙を目にためて、

手を伸ばそうとしてくれたんだ。

そして、僕はその手に向って……



                  



かの有名な天才科学者、アインシュタイン先生はこう述べたと言う。
時間とは常に一定の方向で進んでおり、互いの次元は、相容れず存在している、と。

つまり、過去の自分と、現在の自分が、同一に存在することは有り得ない。
どちらかが「消滅」するしかない。

そういうことである。

「彼」が今の「彼」に会えなかったのもその為。
「どちらかが消える」のを、彼は躊躇していた。

消えるのは、どちらか。
それは、もちろん「死んだ彼」であろう。
生きている「彼」の方が、今を生きている「存在」であり、時間軸において
正しい、とされる個体なのだから。

……しかし「生きたい」という願いが、あまりにも強いのならば。
また「何かを遂げよう」という強い意志を持っているならば。

もしかしたら、「今生きている人間」が、「死んだ人間」よりも
劣っている可能性も有る。

だからこそ、彼は、自分に合わなかったのだろうし、また……彼が言うところの
「神様」という存在も、それを認めなかったのだろう。

そして、私も「見えるはずが無い」であろう、自分の「死んだ自分自身」と
有る意味、この数ヶ月バスで共にしてきたのだ、と悟った。

彼が、いつも見ていたのは―― 私だ。

そして、私には、わかる。
嫌なくらいに。

きっと、私は、彼みたいな綺麗な最期を選ばない。
私は、凄く、嫉妬深いから。

必ず、私は彼と一緒に居たい、そう願うに違いない。
だから、

私が、私を止めなくっちゃ。

そう思った。

まもなく、バスは終点付近に差し掛かる。彼は「いつものように」運転手から
一番近い場所に立っている。

―― いるのか。そこに。
―― 「私」が。「私の形をした、死んだ私」が居るのか。

止めなくっちゃ。

進む、進む。
怖いおじさんににらまれても、構わなかった。

どいて、くださいっ……!
前へ、前へ通してくださいっ!

時間は、刻一刻と迫る。
だめだ、

もうすぐで、

終点のターミナルだ。

……恥ずかしがるな。

思いっきり、叫んでやる。

私は、注目を浴びるのも構わず、

彼の、

手を、

取ろうとして、

私自身の手を、

のばす、のばす、のば――


「近寄らないでよ、何も知らない癖に」


わたしが、


否、

「私の形をした」

死体が、

腐臭を漂わせながら、

まるで呟いたように、こちらを振り向いた。






                  





暗闇。……その中で、呟いている、少女。



怖かった。
―― 私は、何もしていない、なんていえなかった。
彼に嫉妬して、
彼を殺してしまったのは―― わたし。

でも、もっと嫌なのは、

この、醜くなった顔を、見られるのが、

いや。

「じゃあ、貴方……じゃなかった、もう一人の『私』は……最初から
彼を殺すつもりで居たのね。再び、このバスで」

そうよ。……当たり前じゃない。

「普通は、さ。……というか、良くある小説とか、漫画だと、ここで
奇跡が起こって……ううん、こうやって死んだ私と話していること自体、
普通じゃないんだけれど……貴方は、きっと改心して、成仏する……
そんな結果も有ると思うんだ」

……。

「でもね、私は、自分のことだから、わかる。……嫉妬したことも。
それに、顔のことも。……だって、今の私だって『そうするに違いない』
って思うから」

そう、だったら、邪魔しないで。……アンタは私だけど、こんな目に
あった私じゃない。だから……アンタは

「消えろって言うんでしょ。……残念だけど。私は、アンタの分まで
生き抜いてやるわ。アンタっていう十字架も背負ってみせる。
呪いたければ、呪いなさいな。それでも、私は、彼と、生き抜く」

何も彼の事を知らない貴方が?
私はね、生きていた時の、思い出があるのよ。
ずっと、ずっと貴方と違って、彼との思い出が沢山有るっ……!
そんな私が、どうして! 今の貴方より!
こんな目に会わないといけないのよっ!!

「だから! ……アンタの分まで、彼を幸せにしてみせる!
彼は……彼は、アンタなんかに、」

暗闇の中に、

一筋の、光。

そこには、

彼。

「……っ!」

私は、手を、

手を伸ばす。


「お願い、手を、手を伸ばしてェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」






                  




「それにしても、こんな話、まさか真剣に聞いてくれるとは思わなかったよ」

赤いチャイナドレスの少女に向って、僕は答えた。
後で、彼女から聞いた話だと、どうやら「もうひとり」の僕がこの少女に
見惚れたので、嫉妬したのだとか。

結局、僕らはそんな奇妙な体験をした者同士……すっかり意気投合して、
付き合い始めようか、という話になった。
……色々な意味で、不思議な縁だ。

縁といえば、この赤いチャイナドレスの少女。
僕が、小学校のとき、隣の席に座っていた女の子だったのだから、
びっくりした。


「ま、この話を聞いていると、あたしにも原因があるよーな感じだしね」
「そ、そんなことはない! ……見惚れてた、んじゃなくて、昔の
知り合いに顔が似てたんで、つい見てしまったんだよ」

「んー。話を交ぜ返すようなことは辞めた方が良いと思うぞ」
と、青いチャイナドレスの女の子は目を細めてそういった。

「それにしても吃驚したわ。バスがいきなり急停車したんですもの。
それで慌ててみたら、貴方たちが倒れててね。……事故にならなくて
良かったわ」
「それで、事務室に連れてきた、というわけか」
「ま、今食べた料理代は、きっちり払ってもらいますけどね」

あはは……と笑う僕たち。

とにかく、これでめでたし、めでたし。

「じゃあ、僕らはこれで」
「うん。頑張んなさいよー」

赤いチャイナドレスの女の子に向って、僕らは手を振った。

「幸せにならなきゃな、僕たち」
「そうね」
「……僕は、もうひとりの僕の分まで」
「そうね」
「そして……」


ガタン、ガタン、ガタン……。

踏み切り前の、列車の通過音で、

「君は、「死んでしまったもうひとりの」君の分まで」

僕の声が掻き消されたのか、

「え、ごめん……聞こえなかった」

彼女が微笑む。

「いや……なんでも、ないよ」

―― そうだ。時間はまだたっぷりある。
これから、少しづつ、

歩き出せば良いんだ。

「行こうか」
「ええ」







                  




「おーい、こっちは終わったぞー」
「ええ、ありがとう。アンタも休憩、行って良いわよ」
「なんだ? 難しい顔して」
青いチャイナドレスから強調された胸が、ぽよ~ん、と当たる。

「……」
「ほえ?」

「ま、良いわ。……今日の……ほら、例のカップルの話だけどさ」
「ん? それがどうかしたのか?」

「最期、彼女が手を伸ばしてーって言って、気が付けば二人はバスで倒れていたのよね」
「ん、そうだな」
「確か、彼女の話だと、「死んだ彼」が消えているのを見たって言ってたわ。つまり、
どちらかが消えるのは、間違いないわけよね」
「……それがどうかしたのか?」

「いや、男の方は恐らく「死んでしまった彼」が消えたってことでほぼ間違いないんだけど」
「……それって」

「彼女の方は、結局『どちらが消えた』のか、あいまいなままだったような」
「だ、だだだだだだだだだめだ! その先は、その先は言うなー!」

あはは、なんてね。……まさか、そんなことは。


……まさか、ね。






                  




夕日が、まぶしいなぁ。

僕が、独り言のようにいうと、

先に歩いていた彼女が

「そんなに眩しいかしら」

と言う。

「あぁ、そうだね。お陰で、顔が見えないや」

丁度、夕焼けで彼女のシルエットが黒く、黒く見える。

「じゃあ、こうしたら見える?」


そういって、


彼女は、


こちらを、


逆光から、

離れた位置まで進んで、




振り返っ――





【完】

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[ 2010/06/08 19:16 ] ショート・ショート | TB(0) | CM(0)
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