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5分間の出来事。

【登場する地名、人物名、団体等は全て架空のものであり
実在するものとは何ら関係ありません。】



                  ◆


「嫉妬っていうのはね、自分を高めることが出来る、良いことだと私は思うわけよ」
焼酎をお湯割で嗜む、この女性の言い方があまりにも心地良く耳の中に入ってくるものだから
僕は暫しその音色を聞きながらビィルを口に含んでは「苦い」という感情を押し殺していた。

―― アルコールは、苦手なんだよな。

昨日、フラれた。

その腹いせ、というわけではないが、今、目の前の女性と、こうして愚痴を言い合いをしつつ
ショットバーの片隅で、飲めもしないビィルをちびちびと舐めている。

女性とは、以前からこの店で会うようになった。
互いの素性も知らない。……ただ、お互いが気になる存在だったのか、はたまた「ウマが合う」
と察したのか。気が付けばどちらかが話しかけていた。

今日は、いつもの「歓談」とは違い、前述の通り「愚痴合戦」である。
僕は―― 昨日の事を。
そして、彼女は。

「私ね。羨ましいのよ。――恋なんてさ、もう何年もやってないし。今から話す
愚痴も、そういった華やかな類じゃないんだ」
「僕の話だって、華やかなんてものじゃなかったでしょ? 男の失恋話だなんて、聞くだけ
面白くも何とも無い」
「あら? 私は結構楽しめたけどな」
「そいつは結構。……で、次は君の番」

「そーね。……ね、貴方は『幽霊』の存在って、信じる?」
「……華やかじゃないか。ロマンチックすら感じるね、『幽霊』だなんて」
「それほどでもないわ。……で、どうなの」

「妖怪とかさ、幽霊とか。そういうのはいないと思うけど」

「妖怪と幽霊は全然違うものよ。妖怪、というのは自然現象や生体現象を、擬似的生物として
捉えたモノね。つむじ風がいわば『真空状態』となって肌が裂ける。……これを昔の人は
「かまいたち」の仕業と考えた。あるいは、他の動物を人間が空想の動物と捉えた場合……
「人魚」はこの類ね。これが妖怪の定義」
「……そして、幽霊は死んだモノが『精神体』となって現れる。つまりはそういうこと」

「で、後者の存在を信じるか、ということ? ……んー」

相変わらず、この女性は「変わったことを知っている」ものだ、と感心しつつも、
ここはきっちりと答えておく。

「信じないな。……僕は身近な人を亡くしている。もし、幽霊の存在が有るとしたら、
それこそ、目の前に現れてもおかしくない」
「失くされていたんでしたっけ、その」
「……母と、妹。それに、友達もね。よくある『夢に出てきて』とかいうものは
一度も無かったな。……まぁ、居たら居たで、一度は有って見たいけどね」

「私はこれでも無神論者なのだけれど、幽霊の存在だけは、ずっと気になっていた」
「僕が思うに、死んだら、そこには、何も残らないものだよ。あの世とか、そういうのは
全て生きている人間の『中』に有ると思う。……幽霊もそうだろ? 見るのは生きている
人間だ。生きている人間の、仮想世界の中でしか存在しない」
「神は信じない、ということだから『あの世』は信じない。だから、幽霊も信じない。
……でもね、私は」

と、ここで一呼吸。

「見たのよ」

「何をサ」

「……幽霊を、よ」

そう言って、彼女が指差すと、奥のカウンターには、

「な」


死んだはずの、


いや、正確に言うと、


俺が


コロシタ


女ガ



立ッテイタ。




「ふ、ひぃひぃひぃひhぃh----!!! ゆ、ゆるしてくれぇぇぇ !!
殺すつもりは無かったんだ、殺すつもりは!! ただ、俺は、お前が、
お前が別れるって言うからっ!!」




                  ◆


「えぇ。……えぇ。ストーカー被害で相談に合っていて……えぇ。
以前からマークしていた男性です。……やはり、心の何処かで
ガイシャの事を思っていたんでしょうね。『ガイシャに似た女性』を見せると
簡単にかかってくれましたよ」

女の胸ポケットから、警察手帳が覗かせていた。

「幽霊は……居るのよ。でも、それはあくまで『そういうこと』でって話」

その独り言が、男に向けられて発せられたモノだったのだが、もう既に、
男はその場には居なかった。

さて、「幽霊」は居るか、否か。……それは兎も角、これでもし居たとしても
「彼女の霊」は無事、成仏出来たであろう。

そう思うことにしておこう、と、女は思った。
ふいに、温かい風が、女の前を横切った。


――まさか、ね。

【了】

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[ 2010/02/16 23:40 ] ショート・ショート | TB(0) | CM(0)
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